今回は墨田区京島キラキラ橘商店街にある、オーダーメイドの「PASCO(パスコ)BOX」を製作されているアズマ株式会社さんの代表取締役・片山さん(写真左)にお話しをお伺いしました。普段はあまり立ち寄らない商店街なのですが、39アートin向島で知り合った作家の峰村峻介さん(写真右)のご紹介で撮影の機会をいただきました。
PASCOはパルプと古紙の合成により作られています。色は23種類で、断面をみていただければわかる通り、色が乗る前のベースは白・段ボール色・黒・レンガ色の4色。表の色に合ったベースの色を選ぶわけです。
アズマ株式会社さんで作っているのは主に少数ロットの箱。個人宅などで空いたスペースに箱を置きたくてもぴったりのサイズが見つからない、という場合に希望サイズ通りの箱をつくってもらえるのです。
「他社さんだとまず型をつくり大量生産するので、1個2個の箱は高くついてしまいます。弊社の場合は型を作らず寸法を出してすべて手作業で作ります。型代がかからない、ということでかなりのコストダウンをしています。」
可愛らしいデザイン箱のですが、どのような用途で使われる物なのでしょうか。使う人によっては重い物を入れたりしそうですが。
「耐荷重については、ワイヤーが入ったパターンのものですと20-30kgは大丈夫ですので、子供が乗っても平気です。なので、よほどのことがない限り壊れることはないです。」
その後、実際の作業工程について擬似的に実演していただきながらお伺いしました。
製紙会社の北越コーポレーションさんから届いた2200×1200mmのPASCOを断裁するところからスタートします。注文のサイズに合わせ、カットし、穴を開け、カーブを作り、ワイヤーを入れ、ひとつひとつの工程を上の写真の足踏みの機械を使って仕上げていきます。
「この足踏みで型を抜く機械はケトバシといいます。」
耳慣れない名称に「ケトバシ・・?」と聞き返すと
「足でペダルを蹴飛ばして(踏んで)使うからですよ。」
あーなるほど!覚えやすいネーミングですね。
アズマ株式会社さんの機械は昭和30年くらいからずっと使っているそうで、その中でもケトバシは箱の製作だけでなく、さまざまな業種の工場でつかわれていた昔の主流の機械だそうです。
通りすがりに工場をのぞいて「あっ!ケトバシだ」となつかしがる方もいらっしゃるそう。
ケトバシの型抜き用の部品をみせていただきました。上の写真の型はちいさな穴を開けるためのもの。箱の底にキャスターを取り付ける時に必要な穴なのです。
奥の工場にはずらっとケトバシがならんでおり、ほぼひとつの工程にひとつの機械が対応しています。取っ手の穴を開けるケトバシ、銀色のフレームを付けるケトバシ・・などなど。
型をいれかえて調整するのも大変なのでということですが、取っ手の大小がある場合、大サイズ用のケトバシ、小サイズ用のケトバシと使い分けているのには驚きました。
(一部、電動のものや、型を変えて使う場合もあるらしいです)
筋押し(すじおし)の機械。罫線が入ることによって手で曲げることができます。
こちらはリベット(鋲)をつけるリベッターという機械。
強度を上げるためには、銀色のフレームを取付けるだけでなくワイヤーを入れることもあります。
「PASCOはローラー掛けををしてプレスをして何層にも重ねて1.6ミリにしています。水にも熱にも強くて、180度までの耐熱性があるのでPASCOを曲げるときはガスの熱を使う機械も使用しています。」
ケトバシでくりぬいた紙を受ける箱を見せていただきました。
この箱はPASCOじゃないですよね?
「これはPASCOの箱を作る前、祖父の代から作っていたファイバー素材の箱です。
こちらは雨に弱い、水に弱いという弱点があるので必ず塗装をする必要がありますが、繊維状に固めている素材ですので丈夫で30年~50年は持ちます。昔、学研のおばちゃんが自転車にくくりつけていた箱、あの箱を弊社で作っていました。」
しかしもうファイバーを知るお客さんも少なくなり、塗装という工程が必要なこともあって、アズマ株式会社さんは現在はPASCO BOXのみ製作されているそうです。
アズマ株式会社さんでつくられているPASCO BOXはさまざまな店舗で使われています。具体的には東京ソラマチのロフトや全国の東急ハンズ、曳舟のイトーヨーカドーなど。商品が入っている箱にハトメが入っていたら、それはアズマ株式会社さんの箱かもしれません。いまも企業からの注文が入っているので、取り扱い店舗は増えていくそうです。
楽しくて全工程を写真にとりましたが、さすがに全部はアップできません、、、(笑)
小さな町工場から広がる風景、とても面白かったです。ありがとうございました