橋のたもと


反共感論」という本を読み終わりました。
「共感は偏向しており、郷党性や人種差別をもたらす。また近視眼的で短期的には状況を改善したとしても、将来悲劇的な結果を招く場合がある…」
容赦ない内容で、ところどころ笑いつつ楽しく読みました。

以前から共感できるかどうかでマイノリティをジャッジすることの問題を感じていました。
最近の事例でいうと、JRの車椅子利用者乗車拒否問題を個人のわがままだと受け取る人が多いこと、トランスジェンダーの方が自認する性別のトイレを利用することに不寛容な人がいること。
ドラマなどでいくらマイノリティを「感動的」に演出したところで、現実の理解はなかなか進みません。かえって「理想のマイノリティ」と現実の人間が比較されてバッシングされたり、つまみぐいで「共感できる物語」をつくられて、本当に必要な問題が無視されてしまうこともあります。

場面緘黙についても、フィクション/ノンフィクションにかかわらず理解しやすいキャラクターが求められたり、「友達ができなくて寂しかった」という誰にでも共感できる表現に押し込められてしまったりなど、今後も起こり得るであろう問題について考えさせられることもあり、共感のネガティブな面には関心があったので興味深く読みました。

本の著者は、冷酷になれ、と言っているわけではなくて、「共感」のような個人の感情に振り回されずに、冷静に他者を思いやり助けられるようになるにはどうしたらいいのか、ということを言っています。いい本でした。

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