水曜日

――― それは「夢の言語」「隠喩の言語」だったの。トラウマを経験した人ならわかると思うけど、分厚いアスベスト対策用の手袋をつけないと扱えないようなことがあるの。そして、性的または肉体的な虐待を受けた人々は自ら暴力的な傾向をもつことがあるというけど、わたしはそうではなく、ああいうかたちで作家になった。(オオカミ少年は真実を語れるか──世界を騙したJ.T.リロイ=ローラ・アルバートの狂気と正気)

すこし前に「作家、本当のJ.T.リロイ」という映画を観た。

単なる虚言癖の野心家の女性が嘘がばれてトラウマ話でごまかそうとしている・・・とみることもできるが、受けた心の傷と架空のキャラクターと物語の関連がとてもリアルな気がした。トラウマ体験を凝縮して煮詰め、キャラクターにすべての傷を引き受けさせる。現実よりも極端なエピソードにすることで自分から切り離すことができる。多重人格では無いけれど、構造としては同じだろう。たくさんの人がだまされたのも物語の根本にある感情のリアリティを支持したのではないかと思う。とにかく面白い映画だった。

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